自動車学校で免許を取得する際に必要不可欠なのが「高速教習」です。それまで行っていた一般道での教習に加え、高速道路での走行練習を実施します。運転時に注意すべきことが一般道とは異なるため、教習前に不安や緊張を覚える方も少なくありません。今回はそんな「高速教習」について、学ぶ内容や事前に準備すべきこと、高速道路走行時のコツなどを解説します。
目次
高速教習とは?
高速教習とは、その名の通り高速道路を安全に走行するための教習です。通常の技能教習では、ほとんどが指導員と教習生の一対一で教習が実施されますが、多くの場合、高速教習では同じ車に複数の教習生が同時に乗車して行われます。
高速教習の目的
高速教習は1994年に自動車教習のカリキュラムに追加されました。全国各地に高速道路が整備されたことで、自動車免許の教習生の段階から高速道路の運転に慣れておく必要性が高くなってきたためです。現代社会の車移動の仕組みや安全性を考えれば、高速教習はなくてはならない存在だといえるでしょう。
実施するタイミング
高速教習は、仮免許証取得後の第二段階で実施されます。高速道路の走行には、一般道の運転に比べてある程度の経験と技術が必要です。そのため高速教習は、第二段階の中でも後半のカリキュラムに組み込まれることが多い傾向にあります。
自動車学校の高速教習の流れは?
高速教習では、一般道を経て高速道路に入り、本線に合流をして走行を行うことになります。先述したように、多くの場合では複数人同時に教習を実施するため、教習中には一度高速道路外やサービスエリア等で運転を交代することになるでしょう。高速道路を走行する時間はそこまで長くはありませんが、一般道とは注意すべき点も異なるため、集中して臨まなくてはなりません。
高速道路と一般道の違い
高速教習を受講する前に、まずは高速道路と一般道の違いについて理解しておきましょう。
高速道路と一般道の違いと言われて最初に思いつくのは「速度」です。一般道では、最高速度が60km/hに制限されているのに対し、高速道路では100km/hに設定されています。運転する道路や車種、天候など、時と場合によって高速道路の速度制限は80km/hや120km/hと変化することがありますが、基本的に一般道よりも制限速度は速いです。高速教習に至るまでに教習所内のコースや一般道でしか運転経験がないと、最初はスピードの違いに戸惑うこともあるかもしれません。
一方で、高速道路には歩行者や交差点がなく、一定のスピードで運転し続けられるというメリットもあります。周囲の状況や速度に慣れさえすれば、一般道よりも早く目的の場所に着くことができます。
また、高速道路は一般道よりも道路幅が広く設定されていることも運転がしやすいと感じる一つの要因となるかもしれません。一般道では2.75〜3.5mを基準に道路幅が決められていますが、高速道路では3.5mと一般道の最高幅を基準に設定されています。
高速道路を走らないケースもある
高速教習は、一般的に仮免許取得後の第二段階で行われるカリキュラムの一つですが、必ずしも全ての教習生が実際に高速道路を走行するわけではありません。自動車学校によっては、特に近くに高速道路がない場合、高速教習をシミュレーションで行うケースがあります。このケースだと、教習所内に設置された専用のシミュレーターを使用して、高速道路での走行を仮想的に体験することになります。
シミュレーションによる高速教習は、実際の運転と異なる点も多くありますが、交通ルールの遵守や高速道路特有の運転技術を学ぶ点では実地教習と同様の効果が期待できます。特に、都市部から離れた地域や離島、道路インフラが限られている地域では、この方法が広く採用されています。シミュレーションになった場合でも、落ち着いて高速道路上での車線変更や合流、追い越しなどの操作を学び、実際の走行に備えましょう。
また、天候や交通状況によっても、実際の高速道路を使用しない場合があります。特に、悪天候や交通渋滞が予想される場合、安全を考慮してシミュレーションに切り替えることがあります。このような判断は、教習生の安全を最優先に考えた結果であり、高速教習の効果を損なうものではありません。シミュレーターを使用する場合は、実際に高速道路を走行しているイメージを膨らませ、教習を受けるようにしましょう。
事前準備は?
高速教習を受講するにあたって事前に準備しておく項目として、以下のポイントが挙げられます。
・学科の内容を復習する
・自身の体調管理
・走行中の流れを確認しておく
ここでは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
学科の内容を復習する
高速道路での技能教習を受ける前には、必ず学科教習の「高速道路での運転」を受講しておく必要があります。そこで学んだ高速道路走行時のルールや心構えを、高速教習が始まる前に復習しておきましょう。実際に高速道路を走行しながら学んだことを思い出せば、知識の定着もしやすくなります。
自身の体調管理
高速道路では、一般道とは違いすぐにトイレに行くことはできません。高速教習が始まる前にトイレは済ませておき、もしも体調がすぐれない場合は無理をせずにキャンセルすることも大切です。また、寝不足も厳禁です。居眠り運転の防止はもちろん、車酔いにも注意しなければなりません。高速教習中、半分以上の時間は他の教習生の運転に同乗することになります。普段乗り慣れていない運転に酔ってしまう可能性も考えられるため、体調は万全にして臨みましょう。
走行中の流れを確認しておく
当日走行する高速道路や目的地(方面)などを確認し、教習中に慌てることのないようにしましょう。特に料金所で進むべきレーンについては事前に知っておくとスムーズです。多くの場合、教習車にはETC車載器が搭載されているため、ETCレーンに進めばよいですが、中には回数券や現金で支払いをするケースも稀にあるようです。心配な場合は事前に指導員に確認をするようにしましょう。
受講前の心構え
初めて高速道路を運転することに不安を持っている方も多いのではないでしょうか。これまで運転してきた一般道とは、速度や周囲の車の流れも異なるので高速道路を運転することに恐怖を感じるかもしれません。しかし、一般道路と同様に注意すべき点をしっかり押さえておけば、高速教習本番も安心して運転に臨めます。
ここからは、高速教習を受講する前の心構えについてご紹介していきます。
不安や怖さを和らげる方法
高速道路の運転になぜ不安を感じるのか。まずは、不安に感じやすい要素を分析していきましょう。
高速道路の運転では、一般道路以上のスピードを出すことが求められます。速度制限としても、一般道路の最高速度が60km/hなのに対し、高速道路は最高速度が100㎞/hを超える道路もあるなど、一般道に比べ設定速度が速い傾向にあります。これまで出したことのない速度での運転なので、アクセルの踏み方や運転中の景色の変化にも慣れる必要があります。
また、高速道路では自分の運転以外にも合流箇所への注意をしなくてはなりません。自分が合流する場合はスムーズに既存の車線に入ることができるか、合流してくる車を見ながら正しく状況判断ができるか、気をつける点が多々あるためパニックになったり、漠然と不安に感じたりしてしまいがちです。
ほかにも、高速道路での運転は単調であること、そして長時間の運転を求められることから、運転者は注意力が低下しやすくなる側面があります。走るスピードの速さから、事故時の恐怖を感じやすくなり、高速教習を初めて受講する人が「自分は大丈夫だろうか」と、疑心暗鬼に陥りやすいのです。
自信を持って高速教習に臨む心構え
では、どうやったら自信を持って高速教習に臨めるでしょうか。
まずは、高速道路における速度についてです。一般道路と比較して高速の走行が求められる高速道路では、慣れるまで不安や恐怖を感じがちです。ただ、勘違いしてはいけないのが、慣れない速さへの恐怖は自然なことということです。運転に対する恐れがあるからこそ、注意して安全運転を心がけることができます。また、高速教習では、ほかの技能教習と同様に指導員の監視のもとで実施されます。指導員はブレーキコントロールは可能でも、アクセルを踏むことはできませんから、スピード不足の方が危険です。安全第一に配慮しつつも、高速道路に準じた速度での運転を心がけましょう。
高速教習中に眠気や体調不良を感じた場合は、すぐに指導員に伝えパーキングエリアに駐車するなどして休憩を取ることが大切です。
高速教習では、初めてのことだらけで最初は戸惑ってしまうかもしれません。難しい運転ではありますが、最初からできる人は誰もいません。教習を受ける前に頭を整理して、慌てず安全第一に教習に臨みましょう。
次章では、高速教習本番にうまく走行するコツについてご紹介します。合流地点でのポイントも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
受講前に押さえておきたい知識
高速教習を受ける前に、いくつか知識を押さえておくとスムーズに教習を進められます。まずは、高速道路の基本的なルールやマナーについてしっかりと理解しておくことが大切です。例えば、高速道路では一般道とは異なり、速度制限が高く設定されており、車間距離を十分に保つことが求められます。一般道路であれば時速30~60km/hで走行している場合、出している速度から15を引いた数(メートルに置き換える)が適切な車間距離となります。これが高速道路の場合は時速100kmでは約100m、時速80kmでは約80m程度の車間距離が必要になります。その他、車線変更の仕方やトラブル時の対応など、高速教習を受講する前に前もって知識を頭に入れておきましょう。PAやSAの違い、合流時の注意点なども高速道路を走行する上でのポイントになってきます。
パーキングエリアとサービスエリアの違い
パーキングエリア(PA)とサービスエリア(SA)は、高速道路上で休憩や給油を行うための施設ですが、提供されるサービスには違いがあります。サービスエリアは、広い敷地内に多様な施設が揃っており、レストランやお土産店、ガソリンスタンド、さらにはシャワーや宿泊施設まで提供されているところもあります。長距離ドライバーにとって、休憩だけでなくリフレッシュできる場所となっています。
一方、パーキングエリアは、サービスエリアに比べて規模が小さく、トイレや自動販売機が設置されている程度の簡易的な施設が多いです。ただし、一部のパーキングエリアでは、軽食コーナーやファストフードなどの飲食店が設置されている場合もあります。短時間の休憩や、軽い飲食が目的で利用されることが一般的です。
ジャンクションとインターチェンジはどう違う?
ジャンクション(JCT)とインターチェンジ(IC)は、高速道路の接続点ですが、それぞれ役割が異なります。ジャンクションは、複数の高速道路が交差・接続する地点であり、現在走行している道路から別の高速道路へ乗り換えるために利用されます。大都市周辺や広域な高速道路網の中で重要な役割を果たしており、複雑な構造を持つことが多いです。
インターチェンジは、高速道路と一般道を接続するポイントで、一般道と高速道路を出入りするために利用されます。主に本線車線(一般道)と変速車線(高速道路)、2つの道路をつなぐ連絡路によって構成されており、有料道路につながる場合には料金所が併設されています。
ETCって?
ETC(Electronic Toll Collection System)は、高速道路の料金所でスムーズに通行料金を支払うためのシステムです。車両に取り付けられたETC車載器にETCカードを挿入しておくことで、料金所を通過する際に自動的に料金が支払われます。これにより、現金やクレジットカードでの支払いが不要になり、料金所での渋滞を減らす効果があります。
ETCを利用するためには、車載器の設置とETCカードの取得が必要です。カードは、クレジットカード会社や銀行から発行され、車載器に挿入して使用します。ETC専用レーンを利用することで、料金所を停止せずに通過できるため、スムーズなドライブが可能です。
トラブルが起きた時の対処法
高速道路でトラブルが発生した場合、迅速かつ安全な対応が求められます。まず、車両に異常が生じた際は、可能な限り速やかに他の車の走行の妨害にならないよう十分に幅のある路肩や路側帯に停車させ、ハザードランプを点灯して後続車に注意を促します。その後、発炎筒を使用して停止表示器材(三角表示板)を設置して、周囲に危険を知らせます。
車両が動かない場合は、ガードレールの外側など安全な場所に避難し、110番通報で警察に連絡するとともに、近くの非常電話でレッカー車を呼ぶなど、緊急連絡を行います。故障時には、JAFや高速道路の管理会社に連絡し、速やかに救援を依頼することが大切です。
高速教習のコツ
どんなに事前準備をしていても、初めての高速教習は緊張してしまいがちです。ここからは、高速教習でうまく高速道路を走行するコツについて解説していきます。
高速道路本線への合流
料金所を通過してすぐに注意しなければならないのが、本線への合流です。合流地点は、特に神経を使う必要がある上、実際に交通事故が起きやすい場所でもあります。うまく合流するコツは、十分に加速することです。怖いからといって、加速車線で速度が出せなければ、本線を走行する車との速度に差が生まれ、追突事故のリスクを生んでしまいます。勇気を出してアクセルを踏み、加速車線を目いっぱい使って速度を上げましょう。
車間距離の確保
高速道路を走行する際は、前の車との車間距離を一般道よりも広くとる必要があります。あらかじめ十分な車間距離があれば、仮に他の車が途中で合流してきたり、車線変更してきたとしても、慌てることなく対処することが可能です。また、車間距離を取らなかったばかりに追突事故やあおり運転などに発展してしまったケースもあります。トラブルを未然に防ぐためにも、走行中は常に注意しておきましょう。
遠くを見る
走行中は遠くを見ることを心がけましょう。高速道路では、一般道よりも走行速度が速いです。そのためすぐ近くの車付近を見ていると、前方車両の事故や渋滞、落下物などに気づくのが遅れてしまうこともあります。視野を広げるイメージで、遠くまで見通すように心がけましょう。
車線変更時
車線変更時も高速道路で事故が起きやすい傾向にあります。車線変更をする際は、ルームミラー、サイドミラー、目視確認で周囲の安全を十分に確認しましょう。問題がなければ、車間距離を十分に保ったまま追越車線に移動します。合流地点と同様、周囲の車の流れに合わせてスムーズに移動するようにしてください。
標識・標示等にに注意する
走行中は標識・標示等にも気を配っておかなければなりません。自分の目的地や出口、分岐点などを示している標識・標示等を見逃すと、目的のインターチェンジで降りることができなくなってしまいます。直前で焦って車線変更することにならないよう、標識・標示等に気を配るようにしましょう。また、標識・標示等に従わないと交通違反となるため、事前に意味を再確認しておきましょう。
高速道路を降りた際の速度に注意する
高速道路を出た後は、速度に注意しておく必要があります。高速道路で長時間走行していると、その速度に慣れて一般道でも高速道路と同じ感覚でアクセルを踏んでしまいがちです。高速道路を降りてからは、いつも以上にメーターをチェックして走行するようにしましょう。
高速教習は事前準備をしっかりして臨もう
今回は高速教習について、学習内容やスムーズに教習を受けるためのコツなどを解説しました。普段以上のスピードで走行するため、高速教習に対して不安や恐怖を感じるかもしれません。だからこそ事前準備を入念に行い、当日の不安材料を少しでも軽減しておくことが大切です。また東山自動車学校の場合、高速教習では指導員が同席し、高速道路の走行に関して、適宜アドバイスを行います。必要以上に緊張せず、リラックスして高速教習に臨みましょう。