自動車を運転している時に交通事故を起こしてしまった場合、当事者のドライバーは「応急救護」を行わなければなりません。そのため自動車学校においても、道路交通法において「応急救護処置」の教習の受講が義務付けられています。今回は応急救護について、基礎的な知識から具体的な教習の流れ、内容について解説していきます。
目次
応急救護とは?
応急救護とは、万が一自動車事故に遭遇した場合のために行う一次救命処置のことです。事故により負傷者が発生した場合、安全な場所への移動や119番への通報、場合によっては救急車が到着するまでの心肺蘇生などの救命措置を行う必要があります。自動車学校では、運転技術や交通ルールを学ぶのと同時に、ドライバーの義務である応急救護処置についても学びます。
応急救護の重要性
交通事故発生時には、周囲の救命措置が負傷者の生死を分ける場合があります。「現場に居合わせた人が適切な処置を施したおかげで、命が助かった」という話を一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。あなたが医師ではないとしても、心肺蘇生などの救命措置に関する知識があれば、人命を助けることができる可能性は十分あります。救急車が到着するまでの間、勇気をもってできる限りの応急救護を行うことが非常に重要なのです。
ちなみに、応急救護には実施義務があります。道路交通法第72条第一項では、「車の運転中に死傷させたり物の損壊があった場合には、その車のドライバーとその他の乗務員は、直ちに車両などの運転を停止して、負傷者を救護しなければならない」と定められています。こうした事故発生に備えて応急救護を学ぶ必要があるのです。
誰から学ぶ?
応急救護教習では、事故発生からの具体的な救命処置について学びます。教習内容としては、人工呼吸や心肺蘇生など、救急車が現場に到着するまでに実施すべき延命措置なども含まれます。そのため教習の指導員は、応急救護処置指導員の資格所持者や医師に準ずる能力を有した人と定められています。
受講するタイミング
自動車学校において応急救護を学ぶタイミングは、仮免許取得後の第二段階の学科教習にて受講していただきます。ただし、一度に受講できる定員が決められており、通常の学科とは違い予約が必要になるため注意が必要です。
応急救護は安全な場所で行う
応急救護を行う際は、まずは安全な場所を確保することが重要です。原則として、交通事故や応急救護が必要な状況に遭遇した場合、自身が救護中に交通事故に巻き込まれるなどの二次災害を防止するために、負傷者を安全な場所に移動させてから処置にあたります。
ただし、負傷者のケガの状態によっては移動させられないケースもあります。その場合は発炎筒を焚く、もしくは停止表示板を使用して安全の確保を行います。交差点やカーブ、坂道、大通りなどの場所は、二次災害の危険性も高いため、路肩や公園、広場といった車の通行が限られる場所で処置をしましょう。
使用する教材
ここからは、実際の応急救護の教習を受ける際にどういった内容を学ぶのかを解説していきます。まずは使用する教材についてです。教習は、座学と実技の両方がありますが、使用するのは主に「教本」「模擬人体装置」「AEDトレーナー(訓練用器材)」の3つになります。それぞれ見ていきましょう。
教本
応急救護では、まず教本で交通事故に巻き込まれた負傷者を救護するための知識を習得します。心肺蘇生や自動体外式除細動器(AED)の使用方法、負傷者への止血をはじめとする救護の方法などが主な内容です。教本には救護の方法が指導要領のもと、わかりやすくまとめられているため、前提知識がなくても安心して学ぶことができます。
模擬人体装置
模擬人体装置は応急救護講習に欠かせない装置です。使用する際は、高い教習効果を得るため、教習生4人に対して大人全身2体(全身1体及び半身1体)を使用して教習を行います。
AEDトレーナー(訓練用器材)
AEDトレーナーを使用する際は、原則1つのグループにつき1台で講習を行います。
AEDトレーナーを交通事故の負傷者に使用する場合、まずは119番で救急車の手配、そして周囲のAEDを探し、以下の手順を踏んで心肺蘇生を行います。
①負傷者の反応を確認
②呼吸を観察した後、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う
③気道確保及び人工呼吸
④AEDを使用する
AEDは、町のコンビニ、スーパー、ドラッグストアといった施設のなかにも備えられています。周囲にほかの人がいる場合、協力してもらい処置することが大切です。
基本的にAEDは、機械音声にしたがって操作を行うことになりますが、主な手順は以下の3ステップになります。
①負傷者の頭付近に置き、フタを開ける
②電極パッドを音声の指示通りにつける
③電気ショックが必要な場合は負傷者から離れ、ショックボタンを押す。
以上が、大まかなAEDの使用手順です。応急救護教習で使用する場合は、音声だけでなく液晶での案内もあります。慌てずに落ち着いて対処するようにしましょう。
上記でご紹介した3つの教材を用いて、応急救護では処置の方法や留意事項などを学びます。座学では、
・現場での対応
事故による負傷者の観察と移動。また負傷者を救命するために必要な手順と管理方法
・一次救命処置
気道確保を含む人工呼吸や胸骨圧迫(心臓マッサージ)といった心肺蘇生法、AEDを用いた除細動など
・止血法
止血を行うにあたって必要となる知識を学びます。血管、出血の種類、出血量ごとに起きうる症状、包帯と布の使用方法など
これらの講義を座学で受けた後、実技の教習に移ります。
応急救護の具体的な内容
ここからは実際に応急救護教習で、どのような内容や流れで学ぶのかを解説していきます。自動車免許取得には必須の教習なので、事前準備をして万全な状態で受講できるようにしておきましょう。
事前準備
応急救護教習は、座学と実技で構成されています。教習中は座って説明を聞くだけではなく、実際に事故現場で行う救命措置を体を動かしながら練習します。模擬人体装置を使って人工呼吸や心肺蘇生など、立ち上がる・しゃがむといった屈伸運動を行います。そのため教習当日は、こういった活動に適したある程度動きやすい服装が望ましいといえます。スカートやサンダルでの受講はやめておきましょう。髪が長い方であれば、事前に髪を結ぶなどしておけばスムーズに救命練習を行うことができます。また、アクセサリー類やネイル等は実技の中で破損してしまう恐れがあるため、あらかじめ外しておきましょう。
座学などで使用する教材は、資料として受講時にその場で配布されます。受講に際して特別必要になるものはありませんが、メモをする場合に備えて筆記用具は用意しておきましょう。
流れ
応急救護教習は、全部で3時限です。1時限目の座学では、教材の映像や配布された資料をみながら指導員の説明を聞きます。2・3時限目からは実技です。まずは指導員のお手本を見ながら動作確認を行い、その後実際に練習用の模擬人体装置を使用して練習します。それぞれ具体的な流れをみていきましょう。
・1時限目
1時限目では、応急救護について基礎的な知識を座学を通して学びます。教習中に配られる教材を見ながら、指導員の説明や映像を見ることで2・3時限目の実技に向けて知識を頭に入れていきます。具体的に学ぶ内容としては、事故後の負傷者への措置や心肺蘇生、AEDの使用方法などです。
・2時限目
2時限目では、模擬人体装置を使用して応急救護を実際に練習します。まずは指導員がお手本を見せます。具体的には、事故発生時に負傷者を発見してから、大きな声を出して周囲に助けを求めることから開始します。負傷者の意識確認や119番への通報、AEDの用意など、救急車到着までにやらなくてはならないことは多いです。実践を通して、実際に行わなければならない応急救護について学びます。
・3時限目
3時限目では、教習生が実践練習を行います。2時限目で見た指導員の動作を参考に、模擬人体装置に対して胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸などを練習します。周囲へ協力を求める声かけや、AEDの装着なども教習を通して練習します。
受講が免除になる場合もある
自動車免許の取得には欠かせない応急救護教習ですが、以下のような資格所持者は免除されます。
・普通免許、準中型免許、大型二輪免許、普通二輪免許のいずれかの免許資格取得者。
・応急救護免除対象者となる資格を有している人(医師、歯科医師、保健師、看護師など)。
上記に該当すれば、教習を受ける必要がなくなります。ご自身が該当するかどうかについては、事前に問い合わせしておくようにしましょう。
万が一に備えて応急救護を学ぼう
今回は、自動車学校における応急救護について解説しました。どんなに注意をはらって運転していても、不慮の事故が発生してしまう可能性はゼロではありません。応急救護教習で救命方法を学ぶことで、万が一の事態に備えておきましょう。東山自動車学校でも、丁寧な応急救護教習を実施し、教習生のみなさんが不安なく公道に出られるようにしています。不明点はぜひお気軽にお問い合わせください。